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アイデンティティは、ゆずれない。 -おひつじ座木星-

先日、あるアート作品を観て泣いた。

楽しみにしていた展覧会ではあったけれど、まさか自分が作品に胸打たれて嗚咽がもれそうなほど公共施設で泣くとは想定していなかった。


その作品は映像で、トランスジェンダーの人が改名した後の、両親との関係をアーティストに語っているインタビューから始まる。愛くるしい笑顔のその人は、「母親が改名前の名前で読んだ時、ぜったい振り向かなかった!」と笑いながら語っていた。


そして作品タイトルである『私が決めた 私の名前を 声が枯れるまで 叫ぼう』が行われる。アーティストの絶叫に似た掛け声に合わせて、その人は自分の名前を大きな声で連呼する。何度も、何度も、自分で決めた自分の名前を。徐々に強い意志を放ち始めるその声に、わたしは涙が止まらなくなった。


親の期待、周りの人の優しい想い。そういうものを感じながらも、人は他の誰かには、なれない。自分自身としてしか生きてはいけない。心がいずれ朽ちて歪んでしまうのが分かるから。みんなの輪の中で安心していたいけれど、人のせいにして死んだように生きるか、ただ自分を生きるか。

時々それを選択する人生のターニングポイントが、誰しもに訪れる。



2022/12/20。

ラッキースター・木星がおひつじ座へやって来る。

この幸運の星は星占いで、人々に幸せをつかむチャレンジ精神を授け、人生や社会の発展に寄与する星とされている。


その星が、おひつじ座という星座へ進むとどうなるか。

おひつじ座は12星座で1番目に配置された星座で、“アイデンティティ”の星座でもある。


生まれたての赤ん坊のようにピュアな魂で人生のスタート地点に立つ。

「私とは、何者なのか。」そう自分に問いかけ動き出す最初のスパークの瞬間。

それが、おひつじ座。


今日から木星がおひつじ座に滞在する約半年間は、誰しもがそんな混じり気のない「自分」を生き始めることになるはず。


親の願いを吸収し、恋人の求める理想を演じ、社会の枠におさまっていく。

それが大人として、そつなく生き続ける秘訣だと分かってきたけれど、それでは心が死んでしまうから。心が死んだままでは、生きてはいけないから。

自分を生きる。


退屈、予定調和、ゆううつ、言い訳、馴れ合い、形だけの安定。

そんなぼんやりとした幻想に浸っていた自分を叩き起こし、「自分にもう嘘はつけない」と立ち上がる。 きっと、あなたも、今日から。


あなたは誰ですか?

どんな自分を「これが、私です。」と呼びますか。

もしかして、自分じゃない誰かを生きてはいませんか。



作品を見終えて美術館を後にし、わたしの足取りは力強くなっていた。

心が決まったから。

わたしは、自分以外を生きられはしない、自分を生きるのだと。





東京・森美術館

『六本木クロッシング2022展: 往来オーライ!』2022.12.1.~2023.3.26.

https://www.mori.art.museum/jp/exhibitions/roppongicrossing2022/index.html


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